マチンガ・コンプレックス

 バティック布の買い出しに行くというAさんにお供して、マチンガ・コンプレックス(Machinga Complex)に先週、行ってきた。

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 ダルエスサラームのイララ地区にある武骨な感じの3つ並んだ4階建ての建物がマチンガ・コンプレックスである。

 マチンガ とは何かと言うと、「タンザニアの都市零細商人の総称」*である。マチンガときいてわたしがすぐに思い浮かぶのは、道端で古靴などを並べて売っている人たちや、渋滞の車の間を縫うようにして、電化製品、CD、浮き輪、シャツ、カシューナッツ、はたまた熱帯魚までありとあらゆるものを手に持って売り歩く男たちの姿だ。

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 彼らは、もちろん当局の許可など取らずに商売をしているし、彼らが仕事をしている路上などはほとんどの場合、商売をしてはいけない場所とされている。当然、税金などの徴収もできない。
 ときどき市当局の取り締まりがあり、商売道具を没収されたり、逃げ切れず一時的に捕まったりするマチンガもいる。3年か4年に一度ほど一斉取り締まりが行われ、小型ブルトーザーまで出張ってきて、無許可だとコンクリートで作られた店までボコボコに壊していくのであった。店の持ち主がその横で大泣きしているのを見たことがある。「どうせ取り締まるなら、こういった店が軌道に乗る前にこまめに取り締まったらいいじゃないの?」と言ったら「数年に一度の一斉検挙っていうのは、選挙のときにはマチンガからも票がほしいから、ふだんは、そのころ合いを見計らってやっているんじゃないの」って言う人もいた。 
 路上や道端からマチンガの商売する場所を移動させるということで、建てられたのがマチンガ・コンプレックスである。
 オープンしたのが2010年9月。オープン前から「こんなところにマチンガが入るはずがないよ」という声をよくきいた。わたしも、見た感じも、なんかとっつきにくく、「おいでませ」感のぜんぜんない建物だなあと思っていた。

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こんな風に次のビルにつながっている


 中に入ったのは今回が初めてである。Aさんのお目当てのバティック布売り場は真ん中の建物の2階にあり、20人以上のママたちがそれぞれの区画に色とりどりのバティック布を広げていた。

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 区画は遠くから見ると檻のようで、景観はいまいちで、それほどお客がたくさんいるわけでもなかったけど、ママたちの客引きの声は活気があった。

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 自分たちで染めた布を売りに来ているんだよという。3mで最初の言い値からして7,000シリング(あとは交渉次第?)と安めなので、Aさんはいつもバティックはここで仕入れて自分の店で売っているそうだ。「カンガやキテンゲはカンガストリートで仕入れるけれど、バティックはここだね」って言ってた。
 お客の延べ数は少なくても、Aさんのように大量に買い出しに来る人が何人かいれば、やっていけるよね。

 1階のビルの正面には旅行用カバンの店がいくつか並んでいて、それなりに商売になっているようだった。

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 しかし、1階や2階でも、カバン屋たちやバティックママたちの店から外れると、ほとんどが空っぽの檻だらけなのであった。たまにTシャツなどの商品が置いてあっても鍵がかかっている上に埃だらけ。ずいぶん長いこと店の主が戻ってきていないことが一目瞭然である。

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 3階、4階も同じ。ソーダなどを売るキオスクはあり、店員もいたけれど、ほかはだーれもいない。3階のキオスクのお姉ちゃんに檻の中の商品を指して
「あそこにある靴が買いたいと思ったらどうすればいいの」
って訊いてみたら
「あそこの店のひとはもう戻ってこないよ。靴が欲しいなら、ほら、この建物の外の路上で売ってるでしょ、そこに行ったらいいよ」
って言われた。

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 ビルから外を見たら、なるほど、靴(古靴)や古着などの路上販売をしているマチンガたちが何人かいて、それなりにお客さんもいるもよう。バス停のそばだしね。

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左端がマチンガ・コンプレックス

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上の写真の部分的拡大図


 マチンガに路上で商売させないために作ったはずのマチンガ・コンプレックスだったのに、建物の中の店はがらんどうで、すぐ外の路上販売のマチンガが活気を呈しているとは、皮肉だね、っていうか最初から無理があったんでしょうね。

(つづく)



 
 *「都市を生き抜くための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌」
 小川さやか著 世界思想社 より

この記事へのコメント

sharo
2012年03月19日 10:25
うわーっ、こんなとこが!こんど是非行ってみます☆
aya
2012年03月19日 12:01
うーん、せっかくの立派な建物もったいないですね~
路上販売と比べて場所代も高いんでしょうけどね。政府も規制するなら徹底しなくちゃ何もかもが中途はんぱですねー。ブースがちゃんと埋まってお客さんが流れてくれば活気もでて便利なお買い物スポットになりそうなのになあ。
naonao
2012年03月20日 23:45
タンザニアに興味あって、覗かせていただきました。
町の様子など大変勉強になりました。
これからもちょこちょこ拝見させて頂きます。
asami
2012年03月21日 22:57
sharoさん

バティック布でまたボンゴな作品を作るんでしょうか。楽しみっ。
asami
2012年03月22日 00:02
ayaさん
 
ブースって言葉があったんですね。ほんとに檻のような場所で、犬小屋のようだと言っているタンザニア人もいました。スワヒリ語でもKizimbaといってニワトリや犬を入れる檻という意味もあるようです…。
もうすこし楽しい雰囲気にすれば、また違うのかなあとも素人考えて思ったりしたんですが。
asami
2012年03月22日 00:04
naonaoさん

Kafibu(=ようこそ)!覗いていただいてうれしいです。そのうち、ぜひ実際にもいらしてください☆